明確な目標を持たないグループの未来

「トップになろうって夢、絶対叶えようね」と、嵐の相葉さんが2004年の24時間テレビでメンバーに言っているのを見て、凄いなあと思って見ていた記憶がある。

そして、夢を現実にした嵐とファンの力には只々感服する。

グループとして活動していく中で、「トップになりたい」「一位を獲りたい」と明確な目標を掲げ、その目標に向かって突き進んで行く姿は美しい。

そんなグループを応援しているファンも、応援しがいがあるだろうし、日々彼らの成長を感じることができて幸せだろうなあと思う。




私はV6のファンとして、十数年V6を見続けて来たが、彼らはこれまでに明確な目標を掲げたことはない。そして、これからも彼らが具体的な目標を掲げることはないだろう。

同世代のTOKIOKinKi KidsSMAPが目標だと宣言する中、彼らは特定のグループを、特定の誰かを目標とすることなく、どんな時も自分たちのペースとV6らしさを最重視し活動を続けて来たように思う。



彼らが口を揃えて話すように、V6は前に前にというグループではなく、自分たちよりも共演者や後輩を前に出させようとする控え目で消極的なグループだ。

極端な話、井ノ原さんが牽引しないと他のメンバーは静かに黙っている人が多い。

昨年の紅白歌合戦の取材においても、いつも場を仕切る井ノ原さんが司会者で不在だったため、口数が少なくなるメンバーの間に変な空気が流れた。「井ノ原がいないから変な間ができますね(笑)」と坂本さんは笑い、慣れないインタビューに答えた森田さんは「大丈夫だった?(笑)」と坂本さんと長野さんに確認していた。

井ノ原さん頼りのところが多いグループであるが、実はその井ノ原さんもどちらかというと前に出て行くタイプではない。デビュー当時は年齢差などでグループ自体が気まずい雰囲気だったことがあり、その雰囲気に耐えることができなかった井ノ原さんが、自分だけは無理をして喋っていたと過去に告白している。現在は無理をして喋っている素振りは全く感じないが、司会者としての職業柄、「沈黙が怖い」と言っていた。



10周年を迎えた後、V6としての場所を見失いつつあり、今後どうして行くべきか危機感を感じた井ノ原さんはメンバーに話を持ちかけたが、言い合いになったことがあると昨年打ち明けている。


彼らの出した答えははっきりとは分からないけど、その後の彼らの行方を見ると、出した答えは個人の活動をすることだった。それぞれが自立し、外で得たものをグループに持ち帰り、グループの活力にすることが彼らの目的だったのだろうか。

それぞれが自分の得意分野で活躍し、そこで得たものをグループに持ち帰った時に合わさったV6は凄まじかった。

パワーアップしていたのはパフォーマンスレベルだけではなくて、グループとしての雰囲気も明らかに良くなっていた。

私はそれが一番嬉しかった。

本人たちが言うように、それぞれがグループを離れて違う場所で活動することで、互いを尊敬する気持ちが芽生え、帰る場所、グループの重要性を感じる大きなきっかけになったからだと思う。
 


V6は誰も「トップになりたい」「1位を獲りたい」「冠番組を持ちたい」とは口にしない欲のないグループだ。最初は本当はそう思ってるけど口に出さないだけなのかもしれないと思っていたけど、彼らを見ていると誰一人そこにはこだわっていなかった。そういう話題になると「俺たち需要ないでしょ(笑)」「俺たちでいいの?(笑)」「何かの間違いだろ!(笑)」と自虐ネタに走る。

CDの売り上げ記録も1位に越したことはないし、ファンも1位にさせてあげたいとは思っているけど、本人たちが「何が何でも絶対に1位を獲りたい」と思っているわけでもないから、その結果、2位や3位なんてざらにある。

AKB48が発売する日に同日発売でV6が2位や3位になったことが何度もあり、その際には、「俺たちもうさ、毎回発売日をAKBに当てて行かない?(笑)」「逆にねっ!」「最後はもう10年計画ぐらいで勝つっていう」「当たって砕け散って!(笑)」「『またV6当ててきたんだけど!?』っていう(爆笑)」「意外と面白いと思うんだよね!(笑)」「もう当ててくるからって逆に向こうがずらしてきたりして(爆笑)」「『また付いてきた!また付いてきたっ!!』って(笑)」と大笑いしていた。

20周年が終わった後には、「俺たちはこれから右肩下がりだから(爆笑)」「下がるとか言うなよ!(笑)」「『学校へ行こう!』の視聴率が良かったみたいだから、その翌日くらいが一番のピークでしょ(笑)」「それからは・・・(爆笑)」とここでも自虐ネタで大笑いし、最後には「30周年まで冬眠する(笑)」と言っていた。

だけど、散々大笑いした後、「これを機にV6の活動が増えるといいね」と真面目なトーンでポロッと言っていて、その一言に思わず涙が溢れた。*1


「これを機にV6の活動が増えるといいね」という言葉の背景に、 個人活動に重点を置いたため、年に片手で数えるほどしか全員が顔を合わせなかった年があったことなど色々考えてしまい、余計に感慨深いものがあった。

過去をあまり話したがらないメンバーが多い上、どんな時も個人を尊重してあげたいという人を思いやるグループだ。

そんな彼らがグループとしての活動がなくなった時にどんな気持ちでいたのか・・・「これを機にV6の活動が増えるといいね」という温かくもありどこか切なさを感じる言葉に、泣かずにはいられなかった。


グループとしての目標を聞かれても、みんながみんな「分からない」とか「特にない」と答えるV6がV6らしくて私は好きだし、良くも悪くも流されるままのV6が私は好きだけど、そんな彼らを見ていると、時々V6としての未来が怖くなる時があった。だけど、今は怖くない。
 
昨年は20周年ということもあり、「今から10年後、20年後のV6を想像してください」と色んなところで言われて、「踊ってるのかな・・・」「10年後はまだ踊ってるでしょ?」「昔は今の歳で踊ってるとは思ってなかったけど今踊れてるから、10年後は意外と踊れてると思う」「20年後はどうだろう・・・」「坂本くん64歳だけど(笑)」と爆笑してるメンバーと遠い目をする坂本さんを見て、当たり前のように6人が6人でいる未来を想像して笑える未来が素敵だなあと思った。

森田「健とは14歳の時から一緒にいるけど、俺が死んだらこいつどう思うのかな?」
岡田「俺が死ぬ時はみんなのことを思い出だすだろうなあ」
井ノ原「お前が一番最初に死ぬみたいじゃん」
坂本「岡田、心配するな。年齢的に俺が先だ」
岡田「みんなのこと思い出すと思う」
長野「年齢順に死んだら5人が岡田のこと天国から呼んでたりして」
井ノ原「『MUSIC FOR THE PEOPLE踊ろうぜ!』って」
三宅「雲がふかふかしてそうだな」

2013年のライブ「Oh!My!Goodness!」での一コマだ。グループとしての明確な目標はないけど、メンバーが死ぬまでの過程や死んだ後のことは明確に考えることができる激重なV6が私は好きだ。「トニセンに一言お願いします」と言われて「長生きしてね」と伝える森田さんの激重な最大限の愛情が好きだ。


良くも悪くもフラフラ、ユラユラしていて、欲もなければグループとしての明確な目標もないグループだけど、それがV6だ。そんなグループだけど、どんな時でもファンの気持ちに寄り添ってくれて、新しい世界を見せ続けてくれるV6が私は好きだ。

「国民的アイドルV6」と表記されて違和感を感じるV6と、それを見て「私の知ってるV6かな?」とネタにするV6のファンが私は好きだ。

「日本でアイドルという職業に就いている人はほんの一握りしかいないわけだから、俺たちは絶対にアイドルでいた方が良いんだよ!」という井ノ原さんのテキトーな定義を聞いて笑ってるV6が私は好きだ。

「トップになりたい」「一位を獲りたい」「冠番組を持ちたい」なんて言わないけど、「リーダーになって良かったことは?」と聞かれた坂本さんが、「周りから『V6って良いね』『仲良いね』『雰囲気良いね』って見てるだけで『良いね』って言われるグループになりたかったから、そういう風に言われると嬉しい」という言葉がV6らしくて私はとても好きだ。 

そんなグループのファンになれて私は幸せだ。

そんな彼らが大好きだ。

*1:トニセンのラジオ「Next Generation」より。